商標を出願しても登録しないのはなぜ?~特許事務所で疑問だったこと
こんにちは!
特許事務所に勤めていたときに、お金を出して商標調査、出願までするのに、いざ登録となりましたと連絡すると、登録しません、と返事がくる企業様がいらっしゃいます。
事務所にいた頃は、これが常々疑問でした。いらなくなったと言われればそうなのですが、なんだかもったいない氣がしていました。それが、企業勤めをしてなるほどな、と腑に落ちましたので、今日はその辺のお話を。
◎目次
- 1.当たり前だけど、同じものは使えない
- 2.今のサービスのサイクルはめちゃくちゃ早い、特にIT系
- 3.企業と事務所を体験することは面白い
- 4.調査だけでもいいという理由
- 5.でもやっぱり出願しちゃう
- 6.リスクと予算のはざまで
1.当たり前だけど、同じものは使えない
私の働いていた企業では、サービスの企画が立ち上がり、サービス名が決まったら、とりあえず法務・知財に相談、という流れができていました。他社のサービス名と同じものだったりすると色々と面倒ですからね。
そういえば、逆のパターンでこんなことがありました。他社さまのサービス名が前会社の所有する商標とばっちり同じで、しかもだんだんサービスが盛り上がり、名前が売れてきちゃって・・・、ということがありました。
たまたま、使っていない商標だったので静観してましたが、のちのち、売ってほしいとオファーがありました。そうなると、やっぱり足元を見られる、というか、先方の立場がなんとなーく弱めになっちゃいますよね。
きっと、次に書くように、そんなに続かないと思ったか、事業部門が調べずに進めちゃったのかな、と推測しました。
こんなことがあるので、サービス展開前に、調査、出願は済ませましょう、というお話を前の会社ではよくしていたのです。
2.今のサービスのサイクルはめちゃくちゃ早い、特にIT系
前の会社はIT系だったのですが、IT系のサービスサイクルって本当に早いのですよね。サービス出して、上手くいかなかったらさっさとやめる。これが早い。
ですので、調査して出願して、登録なりましたよーという頃には、
「あ、サービス来月で中止になりました!」
と、言われることが結構ありました(笑)
3.企業と事務所を体験することは面白い
私は、事務所時代に商標登録をしない会社があることを思い出し、理由の一つはコレか!と思いっきり腑に落ちました。事務所と企業の両方を体験してみるというのは、業界の全体像を見ることができて楽しいですね。
4.調査だけでもいいという理由
そういえば、事業部門は、よく調査して同じ商標がないか見てくれるだけでいいです、ということを言う場合もありました。確かに、サービスの予算に商標費用も含まれるのでしょうから、なるべく抑えたいというのが事業部門の心持なんでしょうね。
知財部門としては、出願しないデメリットもお伝えするのが仕事なので、一応、お伝えするわけです。でも、このサービス続くのかな~なんて心の中で思っちゃったりすることもあります(笑)
正直、そこにいる皆、コレ出願いらないよね??って思ってる風な空気が流れるときもある訳ですが、ときどき化ける(売れる)サービスがあったりするので、判断が難しいところ。
5.でもやっぱり出願しちゃう
そんなこんなで、事業部門も保険的に出願しとくか、となるケースも多々ある訳なんですが、やっぱり日の目をみないことがよくありまして、特許事務所様に
「今回は(も?)登録は致しません。」
と連絡することになる訳です。
6.リスクと予算のはざまで
前職でいつも頭を悩ませたのが、この出願しないデメリットと、出願したところでサービスが中止になってしまい出願代や手間などがムダになってしまうことなのです。
もちろん、リスク回避のためのお金や時間と考えればムダとは言えないです。ただ、なるべく不要なお金や仕事は減らしてあげたいとも思っちゃうわけで。
ここが、知財や法務の仕事の難しさ(責任ある部分)なのかな、と思っています。
ということで今日はこの辺で。
それではまた!